「作品」なのか、「商品」なのか?

作家が生み出しているのは、「作品」であって、「商品」ではない。

でも、どれだけ思いを込めて作家が作品を生み出しても、世の中を流通し、多くの商品と競争することで、創作物も商品とならざるをえません。今までは、それを避けることができませんでした。

僕らは、「作品」のまま、読者に届けたい。そしてインターネットは、それを可能にするから、そのようなツールを開発したい、というのがマグネットの思いです。

インターネットには、人と人を直接、結びつける力があります。電子書籍には、そのような力がありません。ただ本をデジタル化して、商品として売り出しているだけです。電子書籍は、作品を商品にするので、購入する時の魅力は、値下げになってしまいます。作家が読者に直接届けることができたら、作品は作品のまま、作者の熱い思いを持ったまま、読者に届く、というのが、今のところ僕らが見つけ出した答えです。

コルクという作家のエージェント会社は、作家が創作に集中できる環境を生み出すために、起業しました。出版社で10年間、編集者をしていた僕にとって、プログラマーとの打ち合わせは経験がなく、インターネットは遠い業界でした。でも、作家がインターネットの中に入っていかなければ、創作に集中する環境をつくることすらできなくなる、と考えて、日本有数のプログラマーが集まっているというクックパッドへ相談にいきました。

マグネットのCTOを務める草野さんとの出会いは、衝撃的でした。

「印刷工は、作家の原稿をできるだけそのまま読者に見せたいと思って、様々な努力をした。でも、インターネットでは、みんな売り方について話しているだけで、まだ誰もそのような努力をしていない。自分がそれに挑戦したい」と熱く語る様子を見ながら、僕も、作家のための新しいツールを一緒に開発したい!と強く思うようになりました。

「作品」を読者に届けられるようにするために、僕らは開発を進めていきます。提供できるのはまだβ版ですが、この試みに参加していただける作家の方々をお待ちしています。

Sadoshima

佐渡島庸平

  • コルク 代表取締役社長
  • マグネット 代表取締役社長

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『モダンタイムス』(伊坂幸太郎)、『16歳の教科書』などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社、コルクを設立。現在、『オチビサン』『鼻下長紳士回顧録』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)、『テンプリズム』(曽田正人)、『インベスターZ』(三田紀房)の編集に携わっている。

Photo: Kentaro Kambe